人間では月に1度、数日ほど続く生理。実は犬にも生理があるのを知っていますか?
飼い主にとってはなかなか厄介なものですが、犬にとっては自然な状態です。これから犬を飼い始めようという方で、特にメス犬を希望している場合は、事前にメス特有の生態について知っておく必要があるでしょう。
そこで今回は犬の生理についてお話します。
犬の生理は人とどう違うのか?
いつから始まる?周期は?
などなど、詳しく書いてありますので、参考にしてみてくださいね。
犬の生理とは?
人の生理は子宮内膜が剥がれ落ちることで出血が起こりますが、犬の出血は発情前に起こります。これはそろそろ交尾ができますよ~という合図です。つまり交尾の準備期間に入ったということなので、近くに未去勢のオス犬がいる場合は注意しなければなりません。
犬の性成熟
性成熟とは、卵巣で排卵が起こり、妊娠可能な体になることをいいます。
メス犬の性成熟は犬種によって異なりますが、生後10か月~16か月くらいの間に最初の発情を迎えます。小型犬は早く、大型犬では遅い傾向にあります。
発情について
発情期は主に春と秋の2回訪れると言われてきましたが、実際明確な発情期はありません。オス犬が遠吠えをしたり、そわそわと落ち着かなくなったりするのは、発情したメス犬の匂いに反応しているためで、オス犬の発情期がやってきたということではないのです。
しかしメス犬には明確な発情期があり、季節に関係なく年に2回、6~10か月ごとにやってきます。これを性周期、または発情周期と呼びます。
つまりメス犬が交尾可能な状態であれば、いつでも繁殖ができるようになるのです。
メス犬の発情周期
メス犬の発情はヒートやシーズンと呼び、発情周期は4つの段階にわけられます。
- 発情前期
- 発情期
- 発情休止期
- 無発情期
具体的にどのような状態になるのかを下記にまとめました。
発情前期 約5~15日間
犬の左右にある卵巣には複数の卵胞があります。この卵胞が大きく成長すると、エストロジェン(発情ホルモン)という性ホルモンが分泌され、膣粘膜や外陰唇が充血し、膨大します。
子宮の付け根から左右にわかれ、細長く伸びている子宮角も充血し、子宮膣内に出血するようになります。この出血により、子宮膣内に溜まった血液が膣を通って、外陰唇から排出されます。これを発情出血と呼び、メス犬が交尾の準備期間に入ったことを示します。
また発情出血の中には、オス犬を引き付ける物質である性フェロモンを含んだ膣分泌物が多量に含まれており、嗅覚の優れているオス犬は遠くにいても発情中のメス犬に気づき、近くに寄ってきます。
しかしこの段階ではまだオス犬を受け入れず、拒否します。このオス犬から逃げる時期が発情前期であり、日数として5日~15日の平均8日間続きます。
発情期 約5~20日間
発情前期を過ぎると、やがてオス犬から逃げることを止め、乗駕(じょうが)されてもじっとしているようになります。オス犬に乗駕されたメス犬は尾を上げ、交尾がしやすいような動きを見せます。このような状態を許容といいます。
また、オス犬を許容している期間を発情期といい、だいたい5~20日間、平均10日間続きます。犬の発情期間は他の動物と比べて長いのが特徴です。
発情期の前半は、外陰唇が最大に膨らんで柔らかくなりますが、発情出血の量は徐々に減っていきます。
発情休止期 約2か月間
発情期を終えたメス犬は、オス犬を許容しなくなります。これは発情が終わったことを示し、発情休止期とよびます。オス犬の乗駕から逃げるようになるので、一目でわかると思います。
卵巣から排卵が起こった後、破れた卵胞に黄体が形成されます。この黄体からは妊娠に必要なプロジェステロンとよばれる性ホルモンが分泌されます。
発情休止期は約2か月続き、長期にわたって黄体から性ホルモン分泌されるため、このホルモンの作用によって子宮内膜が肥厚し、妊娠していなくても乳房の乳腺組織が発達します。
発達の程度には個体差がありますが、中には乳が出るようになる犬もおり、これを偽妊娠と呼びます。
卵巣の黄体が退行していくにつれ発情休止期が終わると、偽妊娠の兆候もなくなります。
無発情期 約4~8か月間
発情休止期が終わってから、次の発情前期が起こるまでの4~8か月間、卵巣の機能が停止します。これが無発情期です。
ヒート中にみられる行動
メス犬は発情出血があるため、発情の状態を見極められますが、中には自分で出血を舐めてしまう子もおり、飼い主が発情に気づかないというケースがあります。
発情中のメス犬はお尻を頻繁に気にするようになるので、陰部を見て腫れがないかどうかを確かめるようにしましょう。
その他、ヒート中に以下のような行動がみられます。
- そわそわと落ち着きがなくなる
- 尿の回数が増える
- 食欲減退
- 尿でマーキング
- マウンティング
メス犬もオス犬のように尿でマーキングすることもあります。これは尿に含まれる性フェロモンでオス犬にアピールをするためで、尿の回数が増えるのもこれが理由です。しかしなわばりを主張する目的ではないので、ヒート中にしか見られません。
またぬいぐるみやクッションなどを相手にマウンティング(乗駕)し、腰を振る動作を見せることがありますが、これも発情による反応です。
ヒート中の注意
前述したように、メス犬の発情出血にはオス犬を引きつける性フェロモンが多く含まれています。例えば近くに未去勢のオス犬がいた場合、メス犬の匂いにいてもたってもいられず、繁殖を行おうとして必死になります。これは正常な本能であり、「だめ!」などと叱りつけたり、無理に縛り付けて抑えたりすると、大変なストレスがかかってしまいます。
昔は外飼いが主流だったため、発情の匂いに反応したオス犬が鎖を引きちぎってメス犬に会いに生き、そのまま交尾してしまった…という話もよくありました。
妊娠を望まない場合、ヒート中のメス犬は十分気をつけなければなりません。特に散歩中は他のオス犬と接触しないよう注意を払いましょう。
ヒート中のグッズ
ヒート中は出血で周りが汚れてしまうことが多いです。そのため、現在はヒート中の犬のために、サニタリーパンツや紙おむつが市販されています。これを使用することで出血による汚れを防げますし、ヒート中のマナーとして散歩時に着用する人も多いようです。
サニタリーパンツは、全身を覆う服タイプにパッドを合わせて使うものや、下半身だけを覆うパンツタイプのものなど、とても種類が豊富です。飼い主の中には自分で手作りする方もいますね。選択肢が多いだけに、どんな物を選べばよいか迷ってしまう人もいると思います。
そこでサニタリーパンツを選ぶポイントをご紹介します。
犬にストレスを与えにくいもの
どんなタイプであっても、犬によってはストレスを感じてしまうことがあります。特に普段から服などを着慣れていない子は、嫌がって脱ごうとするかもしれません。
市販されているものの中には、脱げにくいよう頑丈に作られているものがあり、犬が窮屈に感じてさらに嫌がるといったことも。
そのため、なるべく体を締め付けず、動きやすいものを選ぶのが良いと思います。また、かわいいデザインがたくさん販売されていますが、華美すぎるものは歩行の邪魔になり、犬が嫌がる原因になりますので、そのあたりも注意してみてください。
通気性に優れているもの
サニタリーパンツを選ぶときには、通気性が良く、速乾性の素材を選ぶと良いでしょう。また毛玉になりやすい素材や、消臭機能がついている優れものもあります。
蒸れたり破れたりしないような、機能性重視のサニタリーパンツをおすすめします。
サニタリーパンツは便利ですが、長時間の使用は不衛生になりがちで、皮膚炎のトラブルを引き起こすこともあります。サニタリーパンツを着用させている間は、まめに確認をしてなるべく清潔な状態を保つようにしましょう。
紙おむつとサニタリーパンツ、どっちがいいの?
マナー用や介護用として、犬用の紙おむつが市販されています。
紙おむつのメリット
- 使い捨てで衛生的に良い
- 簡単に着用できる
紙おむつのデメリット
- カサカサという音が気になったり、誤飲することがある
- サニタリーパンツと比べてずれやすい
サニタリーパンツのメリット
- デザイン性があり、見た目が良い
- 繰り返し使える
サニタリーパンツのデメリット
- 服に慣れていない犬は嫌がることがある
紙おむつは使い切りなので、サニタリーパンツの方が経済的と考える人もいます。とはいえ、サニタリーパンツを買ったはいいけど、犬が嫌がって履かせられない…ということも、ないとは言えません。
どちらが犬に合っているのか、まずは試してみるのが1番だと思います。
ヒートがなくなるのはいつ?
人間はやがて生理がなくなりますが、犬にも閉経はあるのでしょうか?
犬の場合、閉経はないといわれています。高齢になってくると、発情出血の量が減ることがあるため、発情がなくなったと感じる人がいるようです。
犬を観察していて、明らかに発情がないと感じられる場合は、何かしらの異常が考えられます。その場合は動物病院に相談してみてください。
ヒートをなくすには?
もし繁殖させる意思がないのであれば、避妊手術をするという選択があります。
昔は自然な繁殖本能を無くしてしまうことに抵抗を持つ人も多くいました。そのため望まない妊娠が増え、保健所に持ち込まれる子犬が多くいたのです。
しかし現代では飼い犬を繁殖させない場合、早々に避妊手術を受けさせる飼い主が増えています。
避妊手術を受けることで、望まない妊娠を防ぎ、生殖器にかかわる病気を予防できるなどのメリットがあるためです。
メスの場合、最初の発情期の前後に行うのが良いとされています。
手術は卵巣、もしくは卵巣と子宮を摘出する方法がありますが、入院が必要になりますので、時期も含めて獣医師と相談しながら決めていくのが良いでしょう。
費用は病院や犬の大きさによって異なりますが、だいたい2~5万円ほどかかります。
避妊手術で予防できる病気
乳腺腫瘍
メス犬は高齢になると、乳腺の腫瘍が発生しやすくなります。手術を受けることで発生率を下げる効果があります。
子宮蓄膿症
子宮に膿がたまった状態で、放置すると敗血症を起こします。
また、乳腺腫瘍と子宮蓄膿症の原因の1つに偽妊娠があげられますが、手術を受けることで偽妊娠を防ぐこともできます。
こちらの記事も参照してください。
・犬の避妊手術ってした方がいいの?メリットやデメリット、手術内容や最適時期まで
まとめ
犬の生理、ヒートは生まれついた時から備わっているものです。飼い主としては手がかかることであっても、手術を受けない限りはなくなりません。
そのため、メス犬を飼う際はそのあたりも含めて検討しなければいけませんね。
ここで今一度、ヒートについてまとめてみましょう。
- ヒート(発情)は季節に関係なく、年に2回ほど起こる
- 発情出血は交尾の準備中を示す合図
- ヒートは生涯終わらない
- ヒート中のマナーパンツは機能性と犬に合ったものを重視
- 妊娠を望まない場合は不妊手術を
飼い主として、まずはヒートを理解することが大切です。単に面倒くさいものと片付けずに、愛犬が快適に過ごせるよう、手を尽くしてあげてくださいね。